- 【2024/9/13】令和6年度 歯科講演会アンケート回答集
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① インプラント関連
② ジルコニア関連
③ 義歯関連
④ 矯正関連 -
① インプラント関連
⑴ インプラントの寿命は一般的にどのくらいか?
:インプラントの寿命(生存率)に関する論文はいくつかあります。まず2018年にスウェーデンの大学から発表されたデータをご紹介します。インプラントの10年生存率は96.6%、15年生存率は93.1%、20年生存率は85.3%でした。また、2019年に日本口腔インプラント学会が発表した調査報告によると、インプラントの10年生存率は、上顎で88.8%、下顎で94.0%でした。一般的に上顎の方が下顎に比べ骨密度が低いため、生存率は低くなる傾向があります。
⑵ インプラントセット後のメンテナンスにかかる費用はどのくらいか?
(自分で日常出来る限りのケアをしてきた場合です):インプラントのメンテナンスは保険外での処置となるため、施術を行なう病院・診療所次第となりますが、一般的には3,000円〜10,000円程度に設定されていることが多いように思われます。また、その実施頻度は装置の設計や各個人のプラークコントロールの程度によって異なります。ご不安であれば、インプラント施術前に確認されることをお勧めします。
⑶ 歯科医院による技術の違いはあると思いますが、歯科医院の選び方は、どのようにすれば良いか?
これは外せないポイントがあれば教えてください。:日本口腔インプラント学会の専門医資格を判断基準にしてみるのは一つかもしれません。日本口腔インプラント学会の会員は17,000名超で、日本の歯科医師の約16%以上が入会している我が最大の学会です。現在インプラント分野は(一社)歯科専門医機構による専門医基準を申請中で、今後「インプラント⻭科専⾨医(仮称)」として、皆様により分かり易くアナウンスされるようになるでしょう。
また、その他の学術団体やスタディークラブも数多く存在します。残念ながら各団体間や歯科医師間でも技量・知識に幅があるのが実情です。インターネットの情報や広告(駅・電車・バス等)を鵜呑みにせず、かかりつけの歯科医師(歯科医師会なども活用)によく相談されることをお勧めします。 -
② ジルコニア関連
⑴ 自費と保険の違い 保険治療と比較し、ジルコニアを選択するメリットはどこにありますか?
:一般的に自費の被せ物や詰め物(以下補綴物)と保険の補綴物を比較した場合、材料の特性上、審美性は自費の補綴物が優れると思われます。また、型取りに使用できる材料、作製に携わる技工士の技量、治療・作製にかけられる時間、装着に使用できる材料も異なります。結果として、行なった治療がどれくらい問題なく機能するか(予後)は、相対的に自費の補綴物の方が長くなると思われます。
⑵ ジルコニアは万能ではないと思いますが、デメリット(欠点)としたらどのようなことがありますか?
:まず、ジルコニア単体で被せ物を作製した場合(フルジルコニア)についてお話をさせていただきます。咬み合わせの調整や表面の研磨がしっかりとなされていないと、噛み合わさる歯が痛くなったり摩耗したりする可能性があります。
また、削った歯にジルコニアの歯をかぶせる場合、正しい手順・材料を使用しないと冠や詰め物が外れやすくなる場合もあります。前歯にジルコニアを使用する場合には、審美性をより向上させるために、ジルコニアの表面に陶材を焼き付けて被せ物を作製する場合もあります。この場合はジルコニア単体よりも製作に時間がかかったり、料金が若干高くなる可能性もありますので、担当の歯科医師とよく相談してください。 -
③ 義歯関連
骨がないので、インプラント困難 総入れ歯もなかなか合わないと言われ、今何も入れていない状態です。 →私に適する治療法はありますか?
:文章より、質問者様は全ての歯がない状態(無歯顎)なのだと推察いたします。 それを前提にお話しさせていただくと、質問中に挙げられている選択肢以外に特別な治療法はなく、総入れ歯を入れるかインプラントを利用するかの二者択一になります。
総入れ歯が「なかなか合わない」とのことですが、現在日本では入れ歯や被せ物治療を特に専門とする、「補綴専門医」という資格があります。地域の補綴専門医を検索することも可能ですので,相談してみても良いかもしれません。また、インプラントについてですが、現在は骨が少ない場合でも、各種増骨手術を併用することでインプラント治療が可能となるケースがあります。その分、外科的リスク、費用負担および治療期間が増加してしまう側面もありますので、現在おかかりの歯科医師より専門医を紹介してもらって相談なさるのが良いでしょう。 -
④ 矯正関連
外国では子供の矯正治療は保険が適用の国もあるそうです。
日本は、18歳以下なら、医療費控除されることもある。
こうした国による違いは何故おきるのか知りたい、また日本における小児矯正治療の保険適用の可能性を知りたい。:各国ごとに公的医療制度がどのような治療をカバーするのかは、その国ごとの文化的背景、公衆衛生概念、保険事業として何を重視するのか、および財政状況などにより総合的に決定されるものと思われます。また、その項目は技術革新や財政状況とともに時代ごとに再評価され、改訂が行われます。世界的にみて日本の公的医療保険制度はかなり広い範囲をカバーしており、医療格差は少ない国であると思われます。
現在、日本では重度骨格性の不正咬合(顎変形症)は保険適応となっております。また、審美改善目的以外で行なった矯正治療にかかる費用は、医療費控除の対象となっています。将来的に「日本における小児矯正治療の保険適用の可能性」とのことですが、現在行われている矯正治療が全て適応となった場合の公的医療費の増加を想像すると、なかなか実現が難しいのではないかと思われます。(あくまで個人的見解です。)